がらくたにっき

美術館・展覧会の鑑賞記録日記

河鍋暁斎 その手に描けぬものなし@サントリー美術館

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概要

訪問した日:2019/02/16

★★★★☆

今回のbest:「枯木寒鴉図」

総評

14時40分くらいに着いたら15時からフレンドリートークがあります、と言われたので参加してみる。

結果としては参加しなくても良かったかな。本当に紹介レベルで、展示されているところにある説明書きの方が詳しいくらいだったら。

鑑賞する前に、ポイントとなる作品を知りたい人用かと。

 

展覧会内容としては、劇画として人気を博した河鍋暁斎を、狩野派としての側面、古画をしっかり勉強した側面にもスポットライトを当てたものなっている。

名前は聞いたことがあるけれども…というレベルでしか暁斎を知らなかったので、美術館が意図している意外性という面では驚きなどはなかったけれども、「この作品も暁斎だったんだ」というものがいくつかあった。

また、暁斎自身が、色々なスタイルの作品を描いていたので、バラエティに富み、飽きさせない展覧会で、とても楽しめた。

好みとしては、暁斎の色彩は好みではなかったので、色彩を抑えた水墨画風のものや、劇画・席画の方が好みだった。

心に残った作品 

1. 枯木寒鴉図

黒い鴉を水墨画で表現した作品。

よく見ると、ただ黒く塗っているわけではなく、色々な筆遣い・筆の方向で描いているのがよく分かる。

鴉の頭が少しだけこちらを向いているように見えるのは、くちばしと顎ら辺が濃い黒で、そのすぐ下のお腹がふんわりとした黒だからか。

シンプルな作品だが見応えがあるのがすごい。

 

13.日課観音図

日課で観音図を描いていたそうだ。

台座と光輪が判で押したものになっているのは、初めて見たので、なるほど日課で描くとなるとそうなるのか、と妙に感心してしまった。

 

15.羅漢に蛇図

羅漢1人が岩に座り、岩下にいる蛇を睨む。

羅漢の顔部分が緻密で、衣服は太線で勢いがある。

緻密と勢いのある線、調和が難しそうだが、動きのある線をもって、目の鋭さを増幅させるような効果を出しているのが見事。

蛇に耳みたいのがついているのが、地味に気になった。

 

27.枇杷猿、瀧白猿

2枚の絵が1対になっている作品。

瀧白猿の方は、白衣観音に見立てているらしく、枇杷猿がそちらの方へ枇杷をささげもっている。

その枇杷猿の顔が得も言われぬ顔をしていて、非常に愛らしい。

 

49.鳥獣戯画 動物行列

狐に乗る狸。烏帽子をかぶった梟が先導している。蛙も後ろからついてきている。

題材は不明らしい。

皆同じ寸法だけれども、描写は写実的。

下絵っぽいけれども、余白がほぼなく描かれていて迫力がある。

 

50.蛙の蛇退治

蛇をやっつけて、綱渡りのように縛り付け、蛙が曲芸みたいなのをしている図。

見ているだけで楽しくなってしまう。

絵葉書になかったのが残念。

 

51.蛙の学校

明治に入って教育が入ってきて、それを蛙で描いた作品。

蓮の葉の黒板に、蓮根の椅子、という芸の細かさ。

暁斎は蛙が好きだったらしい。フレンドリートークで教えてもらったのが、暁斎のお墓には蛙を模した石が置いているとのこと。

確かに、暁斎が描く蛙はどれもかわいい。

 

52.蛙の人力車と郵便夫

これまた人力車も、郵便夫の鞄も葉っぱでできてるという芸の細かさ!

 

57.百鬼夜行筆洗

側面い百鬼夜行が描かれている。中は3つに分かれていていて、その一つがまたまた蛙。奥の絵と、側面が見えにくかった。

特に側面はちゃんと見たかった。

 

60.郭子儀図

前に描いた通り、全体を通して彩色のものはあまり好きでないかも。

せっかく線が美しいのに、極彩色に塗られて、その良さが消えてしまう。

この作品も、服の線がかえってうるさくなってしまっていた。

 

67.朝比奈三郎絵巻

朝比奈が色んな架空の国に行く絵巻。ガリバー旅行記みたいな感じ。

鬼やら烏天狗みたいのが出てくる。

朝比奈が岩を持ち上げて、その岩から鬼が転がっているときの、鬼の顔が秀逸。

 

69.貧乏神図

貧乏神が出てこないように、しめ縄で囲まれているのが面白い。

表装もツギハギにされていて、とても凝っている。

 

70.五聖奏楽図

十字架にかかったキリストが鈴を持っているのをはじめ、日本の神様が歌っていたり、老子孔子、釈迦が笛やら鼓やらを奏でている。

西洋人には絶対ない発想。

聖☆おにいさん」に通ずるものを感じる。

 

71.大仏と助六

席図と言われるもので、酒の席などで即興で描かれたもの。

大きな大仏の鼻の下に助六がいる。

鼻から出てきている道、ということで花道の見立て。

大仏の額に畳の痕があるらしいが見えなかった。

表装も濃紺に桜で助六っぽい。

 

72.月次風俗図

1月から4月までが展示されていた。

さらっと描かれたもので素敵だった。

特に4月の田植えの絵で、燕が一匹、小さく描かれているのが粋な感じだった。

 

74.鯰の船に乗る猫

鯰が官吏、猫は遊女を表しているらしい。遊女に骨抜きの官吏を風刺しているとのこと。

仰向けになった鯰の上に、猫がしなやかに寝そべっているのが艶めかしい。

鯰のひげを引っ張る子猫禿も可愛い。

 

77.妖怪図

夏の夜を楽しむ妖怪たち。

夏祭りの出店で、だるまの妖怪の吹き矢射的が特にかわいい。

チビだるまの1つが、おしりを出して「当てれるもんなら当ててみろ~」みたいにしている。

 

79.僧正坊 鞍馬天狗 牛若丸 一名遮那王

牛若丸が鞍馬天狗と戦っている浮世絵。

桜が咲き乱れ、色も派手だけれども、浮世絵となるとかっこいい。

『能の鞍馬山に桜が出てくるので、その影響で桜が描かれたのだろうか』的なことが書かれていたが、「義経千本桜」などあることから、義経=桜にあまり違和感はなかった。

 

94.処刑場跡描絵羽織

こんな悪趣味な羽織、誰が着ていたのか気になる。

九相絵という仏図を、この展覧会で初めて知って驚いていたのが、これを見て更に驚いた。

袖の方は、人力車など、文明開化後の日本の情景が影絵で描かれている。

 

96 97 98 惺々狂斎画帖

すべて細かくてじっくりと見ごたえある。

中でも「飛鳥山の花見」は、好色そうなおじいさんが目隠しして、美女2人を追いかけているのだが、おじいさんの表情や、美女の1人が捕まらないようにとのぞけっている姿などが妙にリアル。

 

105.蘭陵王

よく見る構図ではあるが、筆致などがきりっとした感じでかっこいい。

 

109.ひな祭り図

パトロンである勝田五兵衛(96~98を注文したのもこの人)の娘の一周忌(享年14歳)に描かれたもの。

その子の辞世の句にちなんで、天上でその子がひな祭りしている姿を描く。

天女と一緒にひな祭りをして、幸せそうにしているのが、親の慰めになったのではないかと思われる。その雰囲気の温かさに、暁斎の人柄を感じた。

閻魔様らしき人が頭をかいていたり、怖そうな鬼が人形を持ってきたり、ユーモアに富んでいるのも、穏やかで楽しい雰囲気にしている。

絵の中に表装が描かれていて、そこに天女が舞っているを描くことで、絵から飛び出してきている感じが出ているのも良い。

今回のbestにしようかと迷ったくらい、素敵な絵だった。

 

112.河竹黙阿弥作『漂流奇譚西洋劇』パリス劇場表掛りの場

よく見る絵だったので「暁斎だったんだ!」と思った。

遠近法ができていそうで、なんかおかいしな…とよく見ると、両脇の柵が遠近法にのっとっていなくて、奇妙な空間を作っている。

そういう意味でも興味深い作品。

 

121 122 暁斎絵日記

ずっと絵日記を描いていたというのにびっくり。

 

123.寛永時代美人図 (暁翠作)

娘さんの方が色彩が好み。

品がある作品

 

125.百猩々 (暁翠作)

こちらも娘さんの作品。

猩々たちが、楽しそうにお酒を飲んだり、碁をうったり、盃を頭にのせて宴会に混ぜて!と言わんばかりに駆けてきていたり。

見ているだけでこちらも楽しくなってしまう絵。父親譲り、といっていいかも。

 

最後に作品リストを貼り付けておく;

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