小原古邨@太田記念美術館
概要
訪問した日:2019/02/17
★★★☆☆
今回のBest:枝垂れ桜に雉
総評
茅ヶ崎市美術館で開催された小原古邨展で初めて作品を見て感動したので、太田記念美術館へ。
期待値が高かったからなのか、前回よりは感動が少なかった。
多分、茅ヶ崎で開催された時とは作品が異なるのか、茅ヶ崎のものより劣化しているように見えて、発色があまり良くなかった気がする。
茅ヶ崎市美術館の方が明るかったのもあって見やすかった。
と言いつつも、茅ヶ崎市美術館では展示されていなかった作品が大半だったので、見ごたえはあった。
特に、古邨直筆(というのか?)の下絵が数点あったのが興味深かった。
下絵を見るまでは、「版画に見えない美しさ」と思っていたけれども、下絵を見た後は「版画だからこそ美しいのだな」と思うようになった。
それは決して、古邨の下絵が劣っているというわけではなく、版画の良さというのを再認識した、という意味で。
それは何かというと
絹の上に彩色すると、にじみがでて、どこか印象がぼんやりしてしまう。
それをはっきりさせるために線描があるのだと思うのだが、版画になると、色彩がはっきりするので、この「ぼんやり」というのがなくなる。
それでいて、やたらパキっとしないように、ぼかしを入れたり、木版画の木目を生かされていて、どぎついイメージはない。
更に、空擦という技法を使って、表面に凹凸をつけるなど工夫を凝らして、絵画ではない味を出している。
版画というと、西洋などでは下に見られがちだけれども、これら作品を見ると、版画は版画で素晴らしい、というのがよく分かった。
となると、古邨だけではなく、実際に彫ったりした摺ったり人達にもスポットライトを当ててもらいたい気もしないでもない。
とりあえず、日本の職人技ってすごいな、と素直に感服してしまう。
好きだった作品
枝垂れ桜に雉
構図にしびれた。
枝垂れ桜と、雉の尾の垂れ下がっているのとの反復が素敵。
海上の鷗
海の表現がどこか西洋的で、それがモダンな感じがした。
雪の松に鷲
雪の柳に烏
雪の梅に雀
それぞれの雪の表現が良い。
雪でも枝部分が濃く描かれていて、枝に雪が厚く積もっている様子が描かれているのと、松の作品のように、幹部分も薄い色にすることで全体的に積もっているように描かれているのがある。
「雪の松に鷲」は、白を散らすことで雪がけぶっている様子も表していた。
その表現の多様性が面白いと思った。
また、「雪の梅に雀」に関しては、手前の方は、枝の濃い色と雪の白の対比がくっきりしているのに対して、奥は白抜きのような表現になっていて、遠近感を出していた。
月に虎
月が画面下部に描かれているのが、なかなか斬新な構図だなと思った。
全体的に下に寄った構図で、上がぽっかり空いている。
雨中の鷺
下絵と大きく異なる作品。
下絵は淡い色の背景だが、版画になると、ベタ塗りの黒の中に、真っ白な鷺が大きく描かれている。
その周りを、白い線で雨が描かれていて、なんとも斬新な、モダンな仕上がりになっている。
絵画というよりも、デザイン性が高い作品。とりあえずかっこいい。
さいごに
浮世絵展の人混みを見ると、画集で見たって大体は同じだ、と乱暴な考えをしてしまうのだが、古邨の作品に関してはそれに当てはまらないと強く思う。
凹凸もあれば、白い余白の上に更に白色を乗せたり、こすることで光沢を出したり、と実際に見なければ分からない工夫が沢山施されているからだ。
版画のメリットとしては、何枚も同じ作品を作ることができる、というものがあると思うが、古邨に関しては、それが必ずしも当てはまらない。
版画の無限の可能性を示しているような気がする。
最後に、ちらしと作品リストを貼り付ける;