がらくたにっき

美術館・展覧会の鑑賞記録日記

印象派への旅 海運王の夢 バレル・コレクション@Bunkamura ザ・ミュージアム

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 概要

訪問した日:2019/5/16

★★★★☆

今日のBest:エドガー・ドガ「リハーサル」

全体的な感想

東京出張のついでに久し振りの展覧会鑑賞。

グラスゴーに行った時にはこんな素敵な美術館があるのを、不覚ながら知らなかったけれども、美術館が改修工事で閉まっているということで、海を渡ってやってきたようだ。実際、80点の出展作品のうち、76点もが日本初公開だそうだ!

意地の悪い発想で、改修工事分の資金稼ぎに来たのかなと思ってしまうあたり、かなり性格悪いな、私。

それのおかげで、素敵な作品を日本で見れるということには大感謝なのだけれども。

 

大目玉となっているドガの「リハーサル」は本当に素晴らしかった!

ベタな感じがしてちょっと悔しいけれども、今日のBestはこの作品だったな。元々ドガが好きなのもあるけれども、やはり目を惹く。

あと、水彩やグワッシュの作品が結構あって、スケッチ以外の作品であまり見ないので、新鮮だったし、素敵な作品も多かった。自分で描く時にはグワッシュが結構好きなので、この画材の魅力を更に教えてくれた、という感じがした。

 

バレルさんは静謐な作品が好みだったようで、それが私の好みともマッチしているので、個人的には非常にヒット。

最後は時間がなくなって早足になってしまったのが残念だった。

作品数のボリュームとしても、あまり疲れない量でゆったりと見れるのも良かった。

印象的な作品

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1 フィンセント・ファン・ゴッホ 「アレクサンダー・リードの肖像」

個人的にあまり好きではないゴッホ。でもこの作品は素敵だった!

点描というか、線で構成されている作品なのだが、その線が細くて繊細。

描かれたのはスコットランドの画商だそうだ。

憂いを帯びた顔ではあるけれども、色調が明るく、温かい印象。

線の動きがあるけれども、そんな派手は動きではないし、色のぶつかり合いも少ないせいか、落ち着いた感じがした。

 

5 ヨハネス・ボスボーム 「食卓の家族」

農家の家の風景で、食卓というタイトルだけれども、部屋が大きく描かれ、人やテーブルは奥の方にある。

水彩ではあるけれども、重厚な感じがする作品だった。もしかしたら色調が暗くて、にじみなどがあまりないからかもしれない。

手間が薄く描かれていて(そのタッチで水彩というのが分かった)、抜けている部分もあるので、”重苦しい”という印象もない。素敵なバランス。

是非とも絵葉書が欲しかったけれども、無くて残念だった。

 

8 テオデュール・リボー 「勉強熱心な使用人」

使用人の女性が羽箒を脇にはさんだまま、本を熱心に読んでいる。

ほぼ白黒に近い色調でまとめられた作品。テーブルに置かれた本にわずかな色と、テーブルクロスが暗闇に沈んだ色で塗られている。

使用人がスポットライトにあたったように浮き上がってきてドラマチック。といいながら、そこまで光と影のコントラストがくっきりしている訳ではないので、静謐な雰囲気を醸し出している。

 

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10 ヤーコブ・マリス 「若き芸術家」

本日のSecond Best!

題材自体が可愛いのでずるい感じがしないでもないけれども、グワッシュの魅力を感じる作品だった。

不透明絵具の色むらが、なんとも魅力的なテクスチャを出している気がする。

肌の部分だけスムースな仕上がりにして、あとは色んな種類のテクスチャで表しているのが素敵。

そして基本的には沈んだ色なんだけれども、男の子が塗っている青色のみが発色よくて、しまって見える。

隣に同じ画家の「姉妹」という絵があったけれども、そちらは肌の色がまったりし過ぎている気がして、こちらの方が好みだった。

 

28 サミュエル・ジョン・ペプロー 「バラ」

黒いバックに、太い筆致でのバラって、ちょっと野暮ったく見えそうなのに、全然そんなことなくて素敵だった。

バラの勢いはあるけれども、花瓶が中国陶器っぽく涼やかで、それが画面をまとめている気がした。

 

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ポール・セザンヌ 「倒れた果物かご」

スザンヌの作品に出会うと、なんとなく好きだな、と思ってしまう。

形とかほぼ取れていないし、主題もどうってことない、いつもの自分の好みからは外れているのだけれども、色がすごく好きなんだと思う。

今回もこの哀愁漂う青が素敵!となってしまった。

 

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29 エドガー・ドガ 「リハーサル」

上でも書いたけれども、本当に素敵。

ドガの筆致が粗い作品も好きだけれども、この丁寧に描かれたものも本当に素敵。

構図がものすごく独特でそれも好み。

奥の男の人の服が鮮やかな赤、というのが、奥の色は沈ませる(奥行を出すため)という固定概念を持ってしまっていた自分がバカだな、と思わせた。鮮やかな赤だけれども、手前の衣装係のおばさんと繋がっていて、破たんしていない。

 

顔は例によって、ほぼ全員暗いけれども、表情を描くというよりも、場の全体の雰囲気を描きたかったのかなと思った。

窓から射す光も素敵だし、それを受けて、バレーシューズ、リボン、衣裳のところどころが、本当に美しい色でポイント付けているのが素晴らしい。

衣裳係のおばちゃんの服がチュチュに透けているのも素敵だし、らせん階段も素敵。

もう素敵しか言えない…

 

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35 ジョゼフ・クロホール 「二輪馬車」

グワッシュののっぺりしてしまう、という特性をよく活かしている作品だと思った。

水っぽい柔らかいところに、時々ベタ塗りみたいなものを入れて緩急付けている。

 

37 アドルフ・エルヴィエ 「鶏のいる村の道(バルビゾン?)」

とても小さな作品だけれども、空の色がひたすらきれい。

小さな作品に、建物全体を入れると絵本的雰囲気になって可愛い。

 

49 マティス・マリス 「蝶」

画面いっぱいに女の子が横たわって、蝶々に手を差し伸べている絵。

沈んだ色調ではあるけれども、色がきれいな色で幻想的な雰囲気を出している。

 

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50 ヤーコブ・マリス 「ペットの山羊」

文句なしに可愛い絵。

筆致の雰囲気もあって、ちょっと絵本みたい。

49のマティス・マリスと兄弟らしい。

 

58 ジョゼフ・クロホール 「山腹の山羊、タンジールにて」

山羊が遊びのある線で描かれていて面白い。

線と面で描かれた部分とのバランスが良い。

 

59 ジョルジュ・ミシェル 「嵐雲」

こんなに小さな画面で、嵐前の重苦しさを出しているのがすごいなと思った。

風景となる丘はディテールがほぼなく、色面でした表現されていないので、雲のディテールが映える。

左端に白くきれいな雲があるのが、嵐の中の希望の光!とも読み取れる。

 

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60 ポール・セザンヌ 「エトワール山稜とビロン・デュ・ロワ峰」

やはり色が好き。

手前の緑は、本物だともっと鮮やか。新緑の色という感じ。