ギュスターヴ・モロー展@あべのハルカス美術館
概要
訪問した日:2019/09/23
★★★★★
本日のBest:一角獣
全体的な感想
私の好きな画家トップ3に入るギュスターヴ・モロー展があるとなったら、行かないわけがない。
と思いつつ、汐留でやっているのは間に合わず、『ま、あべのハルカスでもやるし』と思っていたら…気付いたら本日が最終日!
先週とか昨日とか一昨日とか、何度も行こうと思ったけれども、自分の段取りの悪さに本日となった。いやはや、間に合って良かった。
パリのモロー美術館にも行って堪能したはずだけれども、見たことない/記憶にないものが多々あってすごく良かった!
完成した作品は少なく、スケッチや未完のものだらけだったけれども、個人的には完成作品よりも未完の方が好きなので(それはそれでどうかと思うが)、めっちゃ堪能したー
未完の作品、もしくはスケッチの何が好きって、感情の赴くままに描いたような筆致に、それでいて色は計算されたかのように美しく構成されているのがいい。
一種の抽象画を見ているようで、それでいて物語が感じられるのが、モローの素晴らしいところだと思っている。
今回はモローが愛した女性、というのがフィーチャーされていたので、まぁ結構なマザコンだったのね!とか、なんで恋人と結婚しなかったのかしら?とか、割と世俗的な感想まで持ってしまったけれども、作品そのものは神聖な感じがする。
「ファム・ファタル」を描く、ということで、今読むと、かなり女性へ辛辣なイメージを持っているけれども(なぜ優しい女性が好きだったのに、描く女性はかけ離れているのかも考察余地あり)、個人的にはモローの描く女性は、ただ蠱惑的な女性という訳ではない気がする。
性的な魅力、というよりも、彼女たちの内面の強さから出てくる魅力があるというか。
もう一つ思ったのが、やっぱり油絵っていいな~ということ。
絵具を塗りこめたり、薄く塗ったり、筆致を粗く塗ったり、色々しているけれども、それらが絵に奥行を出しているのは、やはり油絵だからかな、と思った。
モローは水彩も結構残しているけれども、やはりモローの素敵なところが明確に出るのは油絵のような気がする。
また油絵を描きたくなってしまった(そして描くと、自分のできなささにがっかりするんだけれども)。
余談ながら、展示室にはいつもある椅子に加えて、アンティーク調のソファも置いてあって、雰囲気を出していた。
そこで爆睡している人がいて、よっぽど心地よいソファなのかな、と思ったり。。。
印象的な作品
どれも素敵な作品ばかりだけれども、今回、眼をとらえたもの。
因みに、図録からのスキャンなので少々歪んでいる可能性大。
最愛の母を亡くし、その後も献身的に支えてくれた長年の恋人にも先立たれて描いた作品。
対象が明確に形作られていないけれども、それだけモローの哀しみが伝わってきそうで、見れば見るほど泣きそうになった。
良く見ると、馬の輪郭を厚く塗り、内側は薄く塗っているのだが、それが逆行具合をよく表していた。
展覧会の図録を買ってしまった理由にもなるのだが、どうやって作品を作っていったのかが分かるスケッチの展示が多く、それも非常に興味深かった。
モローは本や雑誌などから模様・飾りを取っているらしく、スケッチの余白に出典元をメモしているとのこと。
「出現」など完成された作品を観ると、軽く”東洋趣味だな”としか思わないが、習作を見ると、インド絵画に通じるものを感じるくらい東洋。
大阪の展示では左端の展示はなかったけれども、図録にあったので。
(というか、大阪の展示は東京よりも少ないのか!?というくらい、図録にあって作品リストにないものがあった。汐留にも行っとけばよかったと軽く後悔)
右は「刑吏のための裸体男性モデル」。これも、どうやって構想を練っていったのかが分かるのが面白かった。
本物はもっとサロメの体が青味がかっていて、神聖な雰囲気を出している。
アウトラインはひかれているけれども、白い裸体が光っているような描かれ方をしている。
なんとなく、こんな顔のクローズアップって、モローにしては珍しい気がして目が行った。
無表情なサロメの奥で、ヨハネが首を切られそうになっている。静と動の対比によって、サロメの無表情さが引き立っている気がした。
全体的に暗く、赤が印象的に配置されているなか、白い裸体が浮かび上がっているのがなまめかしい。
周りの枠組みが可愛くて、それが印象的だった。中の絵と合っているのかなんだか、微妙なところも面白かった。ちょっとラピュタの模様っぽい。
因みに、これが表紙のメモ帳があって、思わず買ってしまった…
これは「素敵!」で目に留まったのではなくて、「え、エヴァ(イブ)どうしてこんなマッチョになっちゃったの…?」という戸惑いで目に付いた。
お腹が妊娠しているみたいだし、お尻や太ももの筋肉がすごい。色調のせいもあるだろうけど、ちょっとウィリアム・ブレイクを彷彿させるような隆々しさ。
薄く絵具を塗っていった上に、線描で細かな模様を描いている。
基本的に最初のころの、絵具を塗りこめていく感じが好きなのだが、この薄塗り+模様も素敵!と思わせる作品だった。
ユニコーンと少女たちがたくさんいるのが、暑苦しくなく、さわやかに、清らかに描けているのは、このおかげではないかと思った。
未完ということだけれど、これはこれで完成を見てもいい気がする。
パンフレットと作品一覧