窓展:@東京国立近代美術館
行った日:2019/12/25
★★★★★
本日のBest:ズビグニエフ・リピチンスキ 『タンゴ』
感想
なんとなく面白そうだな~と思って、妹を誘って行ったら…これが大ヒットだった!
タイトル通り、窓を題材にした展覧会なのだが、こういうアプローチで作品を集めて展覧会をすると、こんなに面白くなるんだ!という驚きがあった。
解説にも書かれていたけれども、西洋では絵画を「窓」としてとらえるというのが歴史的にあるので、アートと窓は良い組み合わせなのだろう。
印象的だった作品
展示作品のほとんどが撮影OKだった!
東京に一眼レフ持ってきていたのに、この展覧会には持って行かなかったのが悔やまれる…何してるんだ…
ということで、いつものカメラの性能が悪い携帯で撮った写真。
北脇昇 『非相称の相称構造(窓)』
自宅だった寺院の窓をモチーフにしているとのこと。
壁が和紙のような地で寺っぽさが出ている。
それよりも、灰色の中での赤や緑の細い線や、直線の中の曲線といった組み合わせがかっこいい。そしてアクセントとしてある青い丸もよく効いている。
北脇昇 『相関的秩序L.C.M.』
色といい形が可愛いしかっこいい。
いちばん外枠の緑の線が、上の辺だけはみ出ているのも、うまいこと計算されているように見える。
郷津雅夫 『<Windows>より9th Avenue (Manhattan). 5pm June 20, 1980』
Windowsシリーズより何点かあった。(正直、タイトルがこれで合っているのか自信がない…)
その中で、偶然のたまものとはいえ、カーテンの動きのある形と、3人の子供たちがうまいこと配置されていて、絵画的だなと思った1枚。
茂田井武 『<ton paris>より 18 到着早々働く事となりぬ/コック場は半分地下にありて往来の人馬、ただ足のみ見ゆ』
ただひたすら可愛い。
タイトル見ると寂しさを感じるんだけれども、既にパリらしいおしゃれさが出ていて、”パリに来た!”という嬉しさも感じられる。
茂田井武 『<ton paris>より 50 Ce PETIT CHIEN REGARDE le TROTTOIR TOUT LE JOUR (いつも歩道を見ている小犬)』
これもひたすら可愛い。
茂田井武 『<ton paris>より 72 Le distraction chasse l'ennui (気晴らしはうさを追い払う)』
これもただ可愛い。
犬の適当さも可愛いと思いきや、タバコを拾っているのが妙にリアル。
他の所で窓の歴史が書かれていたのだが、技術の発展により大きなガラスを作れるようになり、結果、ショーウィンドウができたらしい。そのことにより、今でいうウィンドウショッピングができるようになり、買い物の形態が変わっていったらしい。
ちょっと面白いなと思ったのでメモ。
アンリ・マティス 『待つ』
個人的に、絵の中の灰色って好きじゃないんだけれども、マティスの灰色は好きなんだよな。多分、それは普通だったら彩度を下げるだけの色が、彩度を引き立たせる色になっているからだろうな。
この絵も、灰色がかっている窓が、窓の外のきれいな海をひきたたさている。
あと、右側の女性のうなじがなんとも言えない色っぽさがある!
タデウシュ・カントル 『教室―閉ざされた作品』
この中に…
マネキンが座ってました。怖ッ!!!
カントルの自分の舞台「死の教室」をもとに作ったインスタレーションとのこと。
舞台の内容を読むと、なかなか興味深かったので観てみたくなった。決して楽しそうな舞台ではないけれども(ポーランドの歴史が題材になっている)、「閉ざされた劇場」というのがどんなものか観てみたい。
確かにこれも窓だ、なビデオ。
非常にリズミカルに、窓が開いたりフォルダになったり、とPC画面上の動きの動画。
実際には、デスクトップにこんなにフォルダとかあると、整理できてない人って感じだけれども、こうやって開いたり閉じたりをリズミカルにされると、見慣れた光景も面白いものに変わる。
ローマン・シグネール 『よろい戸』
これがなかなかうるさい代物だった。
この3つの扇風機で窓を開いたり閉じたりする。面白いアイディア。
THE PLAY 『MADOあるいは返信=埒外のものを愛せよ より』
THE PLAYというグループを知らなかったので、こんな面白うなことをやっているグループが日本にいることにびっくり。
この写真は、この国立近代美術館の窓をはずして、屋内に入れるというプロジェクトのもの。窓をなくすと、他の作品への影響が懸念されるなか、色んな難関をくぐりぬけて実践、という面白い記録。
ズビグニエフ・リピチンスキ 『タンゴ』
本日のBest。これはすごいとしか言いようがない。しかもすごいだけじゃなくて、めちゃくちゃ面白い。
厳密に動きを定められた個々の人達を個別に撮影し、フィルムをくり抜きながら複雑に重ねていっている。
3つの扉と1つの窓から、様々な人が入ってきて出ていくのをループしているのだが、どんどん人が増え、またどんどん減っていく。少しずつ人の行動と行動とが結びついていて、秩序立っていながらも混沌としている。
今でも音楽と、机から落ちる人の叫び声が耳に蘇る。というくらいリズミカルで、耳に残りやすい。
とにかく、ずーーっと見ていたいくらいの面白さだった。
ゲルハルト・リヒター 『8枚のガラス』
きれいな作品。
角度とかが良く練られているのか、映り込みが面白く、人影がはっきりしているのから、ぼんやりしているのまで重なって見えて幻想的。
ガラスの美しさが発見できる作品だった。
藤本壮介 『窓に住む家/窓のない家』
ちょっと廃墟感があってわくわくさせられる。
天気よかったら白が映えてきれいそうだな、とちょっと残念だった。
作品一覧
番外編:常設展
窓展を予想以上に楽しんで、昼時をかなり過ぎても、空腹に耐えながら観終わり、常設展もチケットあるから観なきゃ…と思って行ったら、作品があまりに違いすぎて(日本画などだった)頭が追い付いていかなかった。。。
しかも結構な点数で、空腹時には厳しかった。
色々と素敵な作品はあってじっくり見たいけど腹減ったーーーみたいな。
その中で、今まで知らなかったけど面白い!と思った作家さん↓
尾竹竹坡 『宝の番人』
この尾竹竹坡という画家を知らなかったのだけれども、これともう一つの作品ですっかり好きになってしまった。
この写真は映り込みが激しく、良さがまっっっったく出ていないのだけれども、とにかく番人であるおじいちゃんが可愛い。
尾竹竹坡 『天下廻り持』
これがもう一つの方。
色味は、本物はもっと素敵。
このリズミカルな感じが好き。
中村正義 『源平海戦絵巻 第5図(竜城煉獄)』
一見イラストっぽいのだが、よく見ると戦の悲惨さを感じる。
源平合戦なんて物語のようにしか感じないけれども、その時代に生きて死んでいった人がいるんだという当たり前のことを感じさせられた。
今度、国立近代美術館の展覧会に行くことがあれば、常設展も膨大な作品が展示されることを考えて、時間に余裕がある時に行こうと思った。