ハプスブルク展@国立西洋美術館
行った日:2019/12/24
★★★☆☆
本日のBest:ティツィアーノ・ヴェチェッリオ『ベネデット・ヴァルキの肖像』
感想
平日の昼間だし混んでないだろうと思ったら、意外と混んでた!東京を侮るなかれ。
”ハプスブルク家”なんて使い古されたテーマと思ったけれども、なかなか面白い展示だった。
ハプスブルク家の色んな人達が行ったコレクションを、その人達ごとに展示しているのが面白い。
個々の作品ではなく、コレクターに焦点をあててるのが興味深いというか。
この前に行った「リヒテンシュタイン侯爵家の至宝展」も、ある家のコレクション展ではあるけれどもアプローチが違う。
リヒテンシュタインの方は、コレクションを”宗教画”とか”神話画”とか系統立てて展示していたのに対して、ハプスブルクの方は、各コレクターごとに展示することで、コレクションの変遷が分かるようになっていて、”コレクションすること”について、よりフォーカスしていたと思う。
売店には、ぴあが出している、この展覧会にちなんだ「ハプスブルク」の本があったので、メモって地元の本屋に取り置いてもらった。
これがなかなか良くて、各人のコレクション事情を分かりやすく漫画で描いているので分かりやすい。
ハプスブルク家の中の繋がりも描かれているし重宝しそう。
印象的だった作品
以下画像はぴあからのスキャン。画像はちょっと粗いけれども記録のためなので充分でしょう。
ベルンハルト・シュトリーゲルとその工房、あるいは工房作 『ローマ王としてのマクシミリアン1世(1459-1519)』
ハプスブルク家の繁栄の礎となる、ハプスブルク家初のローマ王。
彼は自分を覚えてもらうのに関心が高く、肖像画もよく描かせていたそうだ。
これくらい自己顕示欲がないと王になれないんだろうなぁと思った。
ヤーコブ・ザイゼネッガー 『オーストリア大公フェルディナント2世(1529-1595)の肖像』
ポーズのせいか頼りなげに見える。
と思っていたら、権力の象徴が全部外されているとのこと。そう知って見ると、権力の象徴を取られて丸裸にされて、戸惑っているように見えてしまう。
それにしてもこの顔つき、どこかで見たことがあるような親近感をわかせる。
作者不詳 『角杯(グリフィンの鉤爪)』
ただただ足が可愛い。
ジャンボローニャ’(本名ジョヴァンニ・ダ・ボローニャ)の作品に基づく 『フォルトゥーナ』
こちらの写真がなかったので。
小さなブロンズ彫刻作品で、水の上の球体に女性が立っている作品。水の上の球体という不安定さが、不確実な運命(フォルトゥーナ)を表現しているらしい。
水が土台になってはいるものの、球体の上に、土台にしては大きな女性像で、しかも衣が優雅に舞っていて、そのバランスがすごい。
アルブレヒト・デューラー 『アダムとエヴァ』
デューラーってすごい巨匠として扱われているけれども、あまり良さが分からないのよね。
描き込みはすごいのよ。言ったら、これなんで線だけですべてを表しているわけで、油絵みたいに色や面で、画面を分割したり形を出したりしている訳ではない。それなのにちゃんとアダムとエヴァが埋没されることなく浮き出て見える。
それはすごいと分かっているんだけど、むしろそこがすごいから目についてしまうのかもしれないけど、顔!これでいいのか!?と思ってしまうのだ…これ、正面から見たら、真ん中にすべて寄ってないか…!?
あとアダムの乳首の位置、ここで大丈夫なの!?
とまぁ、デューラーの絵はこういうところが気になってしまうのだ。
画像がないけれども、同じく展示されていたデューラーの『騎士と死と悪魔』はかっこよくて好きだった。
ディエゴ・ベラスケス 『青いドレスの王女マルガリータ・テレサ(1651-1673)』
絵のサイズが割と大きいので、このポーズもあって、堂々として見える。
ファン・バウティスタ・マルティネス・デル・マーソ 『緑のドレスの王女マルガリータ・テレサ(1651-1673)』
こちらはベラスケスの模写。
ベラスケスの筆致は粗いけれども、やはり臨場感がある。
こちらは緑色が沈んでいて、割と暗い印象だった。サイズがオリジナルより小さいのもあってか、インパクトはかなり小さくなってしまっている。
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ 『ベネデット・ヴァルキ(1503-1565)の肖像』
本日のBest。
この展覧会に肖像画が色々あったけれども、これほど自然で、人としての存在感を感じる作品はなかった。
全体的に同系色で暗いのに、すべてのアイテムそれぞれの質感が出ているし、本人のポーズもリラックスしている感じなのに堂々した雰囲気も出ている。
さすがティツィアーノだな、と感服をせざるを得ない存在感だった。
ペーテル・パウル・ルーベンス工房 『ユピテルとメルクリウスを歓待するフィレモンとバウキス』
これもかなり好きだった作品。
やはり物語を感じる絵はすごい好きだ。
人間の世界に正体を隠して客人として泊まり、途中で神とか天使とか気付かれるという話、個人的にかなーーーーりツボなので(アブラハムとサラ夫婦に天使が訪れる話とか)、この絵のテーマも最高。
メルクリウスの表情とか最高じゃないですか?人間の格好してるけど、神っぽさが抜け切れてない感じ。
ユピテルは、服装的にかなり浮いてる気もしないではないけど、それはそれでご愛敬。
妻の方は、神ということに気付いて、おもてなしの為に家鴨を絞めようとしているのだ。それを、「よし」というような顔で見つめてるユピテル。いいね~
レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン 『使徒パウロ』
皺を描かせると、この人の右に出る者はいないんじゃないかと思うレンブラント。
使徒パウロというと威厳のある感じだろうけど、黒目勝ちのせいか、ちょっと可愛いおじいちゃんになっている。
人物画としてすごいけれども、今回はティツィアーノの方が雰囲気まで描かれていた点で、そちらの方が軍配上がった。
チラシと作品一覧
番外編:内藤コレクション展 ゴシック写本の小宇宙
常設展の方でやっていた内藤コレクション展もすごく良かったので。
ゴシック写本ってそこまで興味を持って見たことがなかったのだけれども、今回のコレクションを見て、その可愛さに目覚めた。
日本のミュージアムに西洋中世の作品が少ない、ということで内藤氏が寄贈されたそうだ。素晴らしい。
写真撮影が許可されていたのでいくつか。
時祷書零葉(ラテン語およびフランス語):死者のための聖務日課(イニシャルN/狐)
ラテン語聖書零葉
この下のディテールの可愛さよ…
ラテン語聖書零葉:テサロニケの信徒への手紙1・序文および本文第1章(イニシャルT・P)
こういう飾り文字が色々とあって、ものすごく素敵だった。
ものすごい細い線とかどうやって書いてたんだろうと思うくらい。
細かいものが好きな身としては天国みたいな展覧会だった。
素晴らしい方のおかげで、全然知らなったゴシック写本の魅力に気付けて感謝しかない。
チラシ