がらくたにっき

美術館・展覧会の鑑賞記録日記

見えてくる光景 コレクションの現在地@アーティゾン美術館

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行った日:2020/1/26

★★★★☆

本日のBest:青木繁『海の幸』

 感想

東京行く用事ができると隙間なく予定を入れたくなるというわけで、前日には太田記念美術館、日曜日にはリニューアルオープンして間もないアーティゾン美術館へ。

友人より「ブリヂストン美術館がすごく好きなんだけどずっと工事してて、確かもうすぐオープンするはず」と聞いていたのが、美術館検索していた時に広告で出てきて、行くしかない!となった。

しかも事前予約したら、学生は無料。なんという太っ腹。通信の大学に入っていてよかったと思う瞬間。

友人も付き合ってくれることになり、10時という張り切った時間からアーティゾン美術館へ馳せ参じたのだった。

 

結論から言うと、なんてすばらしい美術館なんだ!!!石橋財団の財力のすごさと、センスの素晴らしさに脱ぐ帽子がいくつあっても足りないくらいの脱帽具合だった。

 

建物自体は、さすが私営の美術館というくらいのおしゃれさ。ほぼホテル。

今回展示のコレクションの数ははんぱない数で、これで全部じゃないというからひれ伏すしかない。

内容も、私好みというのか、割と分かりやすく美しい作品ばかりなので、観ていて心地よい。

難を言えば、点数があまりに多いので、途中で休憩できる場所があったら良いな…というところか。途中で喫茶店に入って、また戻って来れるという導線だと嬉しいなと。もちろん展示会場の近くでは保存の観点では難しいだろうから、1階のカフェに入って、また展示室に戻れたらいいなと。

まぁ、そうなると人数調整が難しくなって、ただでさえ混雑しがちな日本の美術館では現実的ではないんだろうけど…膨大な作品を、最後まで同じ熱量で見たいがための願望です。

 

話は反れたけれども、アプリをインストールすれば無料でイヤホンガイドが聞けるし、写真も撮り放題だし、最高に楽しめる空間だった。

ついでにミュージアムショップにはおしゃれグッズが豊富にあって、興奮気味の友人&私で買いあさってしまった…写真を撮りまくったくせに図録まで。

でもこんな堪能させてもらって美術館なので何の悔いもない!(しかも私は無料だったし)

好きだった作品

図録は買ったけれども、あえて自分で撮った写真を(スキャンが面倒だったともいう)。

もっとたくさん、好きな作品があったけれども、挙げるときりがないので、その中で特に、というものを挙げる。

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エドガー・ドガ『レオポール・ルヴェールの肖像』

顔と首らへんはしっかり描き込んで、胸の方になると粗くなっていく、という絶妙な手の抜き方がかっこいい。

手を抜くといっても、ただ黒一色ではなくて、青や茶が入っているのも良いバランス。

背景の白く塗りこめていく感じも好きだった。顔廻りのオレンジっぽいものがよく分からなかったけれども、シックなおじさまの肖像が明るくcheerfulな雰囲気を作りだしている。

 

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アンリ・ファンタン=ラトゥール『静物(花、果実、ワイングラスとティーカップ)』

わりと日常的なモチーフだけれども、それだけに安定感を感じる作品。

構図もありふれすぎているけれども、それだけに安心感があるというか。確実に部屋に飾りたい作品。

ヒナギク(かな?)のわしゃわしゃとしたの、めっちゃ描きにくそうなのに、筆致粗く描きながらも可憐さが出ている。

 

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アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック『サーカスの舞台裏』

油絵で白黒という大変珍しい作品。

灰色という色が、不思議な味を出している。木炭画で薄く塗るのとは全然違った色合いで、水墨画で墨を薄く塗るのとも全然違う。

個人的に、油絵の中の黒や灰色ってあまり好きではないのだが、灰色の魅力を感じた。

 

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青木繁『海の幸』

本日のBest。

教科書をはじめとして散々プリントされたものでは見てきたけれども、初めて本物を見た。思っていたよりも小さいサイズ。

でもそこからあふれんばかりの迫力。

ほぼ同じ形の足の曲げ方が、画面にほぼ等均等で描かれているのがリズムに感じる。

複数の銛で「◁」印を作っているのが、皆の進行方向をより強調しているのが、更に動きを作っているのだろう。

何よりも、一見、描きかけのように、下描き線みたいのがすごく残っているところがすごく好き。なんでか知らないけど、モローとか、ぱきっとした完成図ではない作品が好きな傾向にあるな、自分。

 

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藤島武二『黒扇』

一緒に付き合ってくれた友人が、私の描く絵に似ていると、恐れ多いことを言ってくれたのだが、確かに描き方がちょびっと似てるかも。

がんがん塗り込める感じが。

あと頬に青色を大胆に入れる感じとか似てるかもしれないし、実際にこの部分が好きだった。

 

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フランシス・ピカビア『アニメーション』

黒とか灰色が嫌いと書いておきながらだけれども、めっちゃ色が好きだった。

正直、抽象画ってさっぱり分からないけれども、こういうきれいな色を見ると、何が描いてあるのかと小難しいこと考えずに、ただ色の素敵さを愛でていられるので好き。

因みに、この作品のノートを買いました。ノートなんて、ここ何年も使ってないのに…

 

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パブロ・ピカソブルゴーニュのマール瓶、グラス、新聞紙』

ピカソは正直、色が好みではないし、抽象画も「?」なものが多いけれども、この作品は絵具の乗せ方をそれぞれ変えていたり、ナイフで塗り広げられている白が非常にきいているなと思った。

正面から見るよりも、色んな角度から見ることで楽しめる作品というか↓

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特に瓶の白が好き。

 

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ヴァシリー・カンディンスキー『自らが輝く』

これは写真を撮ろうとしたら、光の関係か、全然うまく撮れなかったので早々に諦めて、後からアーティゾン美術館のホームページからお借りしました。

またもや、黒とか灰色嫌いと言っときながら案件なんですが、カンディンスキーの黒の使い方が好きなんです。

それに加えて、カンディンスキーには珍しい(と個人的に思う)、ピンクとか可愛い色味の作品!

夢のような色で、これが「自ら輝くかー…」となった。こんなきらきらと夢のように輝きたいもんですわ。

本日のBest、これとも悩みました。さすが看板作品になるだけある。

 

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ジャン・デュビュッフェ『スカーフを巻くエディット・ボワソナス』
描いている本人は真面目なんだと思うけど、見た途端笑ってしまった。

なんというか、落ち込んでたり、何かにむしゃくしゃした時にこの絵を見たら、すべてが吹き飛ばして笑わせてくれるに違いない。そんな絵。

エディット・ボワソナスさん、陽気な人だったのかな…と思わせる絵。

 

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マーク・ロスコ『無題』

写真では良さがなかなか伝わらないロスコ…

でも、こんなピンクっぽい可愛い色も使うんだ…という驚き2回目から写真を撮ってしまった。

カンディンスキーとは違って、こちらのピンクは青味がかっているペールピンクで、大人なピンク。

 

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マリア=エレナ・ヴィエラ・ダ・シルヴァ『入口、1961』

タイトルの意味が作品から見いだせられなかったけれども、ただただ色が好みだった。

写真がぽんこつ携帯から撮った写真なので、色がちゃんと出ていないけれども、もう少しきれいな青色に、鮮やかな赤っぽい色がチラチラ見えている。真ん中らへんの格子が、局所的ではあるけれども妙に好きだった。

 

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前田青邨『紅白梅』

階が変わって突然日本画で、ちょっと頭が追い付かなかったけれども、日本画も素敵だよね~と思わせる作品。

デフォルメされた梅の形がかっこいい。

 

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前田青邨『獅子図』

これはただただ、親獅子にたわむれる仔獅子がかわいいという作品。

仔獅子を見ている親も、立派な眉毛の下の目はやさしげだし、仔獅子の表情!可愛い!!!

 

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モーリス・ドニバッカス祭り』

前田青邨の並びにこの作品(確か)、コレクション展ならではの融合の面白さ。

お店の為に描かれたというこの作品、皆が楽しそうで見ているこちらもわくわくする。右側の象の鼻から、左の人まで、曲線が何本もあって、それを真中の人のS字の体制によって強調されていて、楽しさ・わくわくさを出している。

ラベンダー色のような影がまた素敵。

 

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ギュスターヴ・モロー『化粧』

はい、来ました、モロー。はい、美しい。

この宝石のように煌めく色彩、どうしたら出せるのでしょう。しかも水彩。水彩ってもあもあしおうなのに、きらっと輝く色彩。すごい。

何がどう”化粧”なのか分からないけれども、色彩の美しさ、色彩がかたどる形の美しさを、ただただ楽しむ、ある意味、抽象画を愛でるのと似たような感じかも。

 

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佐伯祐三『テラスの広告』

私の佐伯祐三のイメージは、パリに行って自身喪失して暗い絵ばかり描いている人、という非常に失礼な印象だったのだけれども、これを見て考えを改めた。

なんておしゃれなの!

色分割された画面に、白と黒の線が踊るように描かれているのが、洗練された都会的雰囲気を出している。

 

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小杉未醒『山幸彦』

日本の神話のはずなのに、フレスコ画(実際は油彩と砂)みたいな色彩で描かれると、イタリアでの出来事に見える不思議。

日本神話を描くのが流行っていた時代なんだろうけど、逆に今見ると新鮮な気分になる。

 

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青木繁『大穴牟知命

日本神話を油彩で描くシリーズ。

小杉未醒がドニっぽければ、こちらはちょっとラファエロ前派風(実際に青木繁ラファエロ前派が好きだった)。

でもラファエロ前派の作品よりも人物が迫っており(むしろ窮屈に見えるくらい)、それだけに臨場感がある。

女性がこちらを見てるところも、鑑賞者をこの世界に取り込んでいる要因の一つ。

こちらも好きだった。青木繁に感動して、その後調べてみたけれども、短命だったうえに、良作を生み出した期間も短かったと知って、切ない思いがした。

 

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ヴァシリー・カンディンスキー『二本の線』

一瞬、ミロかしら?と思うくらいの可愛さだった。

カンディンスキーの作品は音楽を感じるのが多いと思うが、こちらもそんな作品だった。音楽センスが皆無なので、どんな?と聞かれると困るけど…

背景の白が単純な白じゃないのが、毎度のことながらいい。

 

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オディロン・ルドン『VI 日の光』

窓の位置、木の位置が完璧。木がまん真中にあるけれども、窓がちょっと右に寄ってることで、平凡な絵から逃れている。

部屋の中の暗闇の中に、光のきらめきなのか、シャボン玉のような丸いものが漂っているのも、穏やかな雰囲気を良く出していると思う。

めっちゃ好き。さすがルドン。

 

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オディロン・ルドン『神秘の語らい』

ちょっとモローに通じるところのある、色の美しさを楽しむ、抽象画っぽい絵画。

モローとは違って、きらめいてはいないけれども、穏やかな夢見るような色使い。こちらも好き。

 

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ジョルジュ・ルオー『郊外のキリスト』

全体的に黒っぽいけれども、それだけに空の青の美しさが際立つ。

そして月(?)の光を浴びた、キリストらしき服の白さも印象的。

野暮ったいくらいの黒の線と単純な構図だけれども、静謐な雰囲気を感じる。

 

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アンリ・ルソー『イヴリー河岸』

展覧会でルソーの作品を見ると、旧知の人物で、でもずっと音信不通だった友達の作品に出会った気分になる。懐かしいような、それで「あ、元気に変わらずにいるんだ」みたいな。もうとっくの昔に亡くなっている人だけど。

とにかく、そんな魅力がある。

この川の適当さ、人物の大きさの不自然さ、人物の描き方も超適当。でもほっこりする。

 

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岸田劉生『街道(銀座風景)』

岸田劉生も、あの不気味な(失礼)麗子像のイメージが強すぎて、このおしゃれな絵の作者が、まさか岸田劉生だとは思わなった。とりあえずびっくりした。

この大胆な構図といい、影が青味がかっている感じといい、筆致が粗いながらも整っているところといい、確実にフランスのどこかを描いた西洋人画家だと思った!!!

すごく上手だったんだ!(失礼その②)と、単純にも感嘆した。

 

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ラウル・デュフィポワレの服を着たモデルたち、1923年の競馬場』

まるでファッション雑誌みたいな作品で斬新だった。

黄緑色の鮮やかさが、モデルたちのきらきらさを演出しているよう。

モデルたちが、背景と同じ空間にいると思えないくらい浮いているけれども、なんとなく許せるくらいのおしゃれさ。

 

チラシと作品一覧

広告関係の仕事をしている友人はチラシを見るなり「なんて印刷会社泣かせなんだ!」と言っていたけれども、スキャンも大変だった、この形…こだわりを感じる形だった。

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