がらくたにっき

美術館・展覧会の鑑賞記録日記

若冲誕生~葛藤の向こうがわ~@福田美術館

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 行った日:2020/06/26

★★★★☆

本日のBest:若冲『蕪に双鶏図』

 感想

去年オープンしたのは知っていたけれども、第1回目の展覧会には予定が合わずに行けずじまい。

若冲展に行きたいなと思っていたら新型コロナの影響でずっとクローズになってしまって残念だなと思っていたら、うれしいことにオープン!混雑してたら怖いなという想いから、会社休んで金曜日に行ってみた。

金曜日で午前中だったからか結構空いていた良かった!

美術館自体も渡月橋のすぐ近くという好立地なうえに、こじんまりしていて良い感じ。展示数も多くないので、ゆったりした気分で見れるのもいい。

”葛藤の向こうがわ”というのはいささか誇張されたタイトルのような気がしたけれども(そういった文脈の説明はなかったような…)、素敵な若冲な作品がたくさんあって充分堪能できた。

 

ちなみに、スマホで無料音声ガイドが聞けたり(アーティゾンのようにアプリをインストールするのではなくサイトにアクセスする系)、写真撮影OKだったり、新しい美術館らしい特徴もあった。

ということで、下の作品の写真は美術館にて撮影したものから。スマホではなく、カメラで撮ってみたのだが、肉眼では見えない線が写真になると入ってしまったのは、ガラスのせい…?

印象的だった作品

若冲 『寒山拾得図』

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紙からはみださんばかりの勢いある寒山拾得。でもフォルムのためかゆったりとした雰囲気がある。

寒山の笑顔がかわいいけれども、眼をよく見ると黒い点の瞳があって、眼を開けていることが分かる。

 

若冲 『花卉双子鶏図』

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華やかな作品。なんとなく中国っぽいなと思っていたら、解説に沈南蘋の影響が見られるとあって、あながち自分の目も悪くないなと自画自賛

構図などが割ときれいにおさまっているところから、THE若冲!という感じがあまりしないのも確か。

 

若冲 『四季花鳥押絵貼屏風』

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「蓮に小禽」

若冲の好きなところの1つとして、この枝みたいのに見られるような動きがあるところ。絵の中のリズムがあるというのか。

この絶妙さがすごいなと思う。

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右「岩非(がんぴ)に鶏」左「柘榴に小禽」

同じような構図で並べつつ、様相が全く違ってその対比が面白い。

特に柘榴の描き方が好き。

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こういう葉っぱの動きが、リズム感が素晴らしいよなと思う。

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「葡萄」

以前見た、プライスコレクションにある葡萄と似ているなと思って。

正直、プライス氏がお持ちの葡萄の方が素敵な気がしたけれども。

 

若冲 『芦葉達磨図』

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すっとんきょうな顔がかわいい。「千と千尋の神隠し」に出てきそうなキャラだな。

そして衣の筋目描きがすごい!もっと緻密な作品があるから、若冲にとってはおちゃのこさいさいモノだったんだろうけど、狂気じみたものを感じる…

 

若冲 『花卉・箒に鶏図』

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菖蒲のような花ののびやかさと、箒の流れるような先が呼応しているようで面白い。

 

若冲 『鳳凰図』

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若冲の他の鳳凰図を見た時に思ったけれども、鳳凰のこのニタリとした目がなんともツボ。高貴(?)な鳥のはずなのに、ニタリ。

 

若冲 『蕪に双鶏図』

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今回の展覧会の目玉。初公開作品。

目玉なだけあって、THE若冲!という感じで、一幅で若冲のすばらしさを堪能できる。

雄鶏の細かさはもちろんのこと、蕪の細かさはすごい。

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葉の穴から透けてみる感じもいいし

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蕪単体でも、葉のうねうねした感じや、多彩な色も雄鶏の多色さと調和がとれているように思える。

蕪が植わっている表現が、空でたなびいている雲みたいにも見えて、浮遊感も感じるんだけれども、右下にどっしり座っている雌鶏のおかげで、絵が地にとどまっている気がする。

緻密さだけではなく、色彩、形、構図とすべてにおいて調和がとれた素晴らしい作品だと思った。

 

若冲 『雲龍図』

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かっこいデザインと思わせる構図。

白と黒の構図がかっこいい。しかもはっきり分けるわけではなく、上と下に筆のかすれを入れているのも絶妙なバランス。

 

若冲 『鶴図』

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鶴の特徴である長い首を描いてないのが面白いなと思って。

ちょっとかわいい。

 

白隠慧鶴 『金棒図』

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此(この)わろを恐るる人は極楽へ」と書いてあり、「地獄やこの金棒を恐れて、良い行いをする人は極楽に行く」といった意味らしい。

それでぼーーーんと金棒描くのが面白いし、何よりも一筆描きのように、勢いをもってにょろにょろ金棒描いているのも面白かった。一筆描きならでもの力強さを感じる。

 

若冲 『鹿図』

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こんなきりっと上を見上げる鹿を見たことがなくて、面白い構図だなと思って。

眼光鋭いけど、毛並みは薄墨で柔らかく描かれている。斑点も毛並みを表現していて芸が細かい。

 

若冲 『仔犬図』

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全然かわいくなくてびっくりした!(笑)という作品。応挙や芦雪のあざといくらいの可愛い仔犬に比べると、動きもちょっとぎこちない。

鶏みたいにかくかくした動きのものの方が得意なのかなー

 

若冲 『群鶏図』

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鶏見ると安心する。

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ひよこも、仔犬よりずっと可愛い。

 

若冲 『群鶏図押絵貼屛風』

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今日のBestにしようか迷った作品。が、「奇想の系譜」展で似たような作品をBestにしたので譲った。

なんか、こういう勢いを持たせながらも、計算されつくされているような作品に弱い。

しっぽの向きや高さがほぼ一緒だけれども、1つだけ、右隻の一番左にある鶏だけ反対向いている。それによって、左隻と対称になっているのだ。

それが意図されているのか分からないけれども、いったん流れを変えて、次の屛風に行く、と言う感じがして、単調にならずにいる気がした。

 

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しっぽも一筆で描いているのもあれば、単純な線ではなく手を加えているのもあり、バラエティに富んでいる。

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あと気になったのが、鶏の顔にある半円形のもの。なんだろう…二羽についていた。

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色んな形の鶏を描き続けるのもすごいし、それを1対の屛風にしたときに、リズムの調和がとれているのもすごい。

 

鶴亭 『芭蕉図』

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もはや抽象画と言っていい域の作品。

墨でのびやかに、濃淡も生かしつつ、となかなか高度な抽象画。

 

円山応挙 『翡翠香魚図』

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若冲や、この後出てくる蕭白の中に配されると、なんともまとまった優等生な作品だろうと思ってしまう。

岩の濃淡とか、西洋の遠近法を感じられる作品。

 

曽我蕭白 『群仙図』

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遠くから見ただけで「蕭白だ!」と分かるすごさ。

解説より、右下は一度寝ると百日以上起きなかったといわれる陳摶(ちんたん)、中央あたりの桃の木の下に座るのは、天界にある桃園の主人であるとされる西王母で、馬の前にいるのが診察した馬がたちまち元気になったと言われる馬の医者、馬師皇(ばしこう)だろうか?とのこと。

何よりも馬の顔がアンニュイな雰囲気を醸し出していて面白い。

 

曽我蕭白 『唐人物押絵貼屛風』

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これも「蕭白~~~~~」という作品。

家で飾っておきたいとは思わないけど、このアクの強さが癖になる。

まず右端の甕からお酒を直接飲む人の服!

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くるくる線で描かれたこの服はなんだ!?

もちろん顔もポーズも珍妙なるものだけど。

左端の布袋さんも

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太った体をあらわにして、おっさんが裸になるなよ!って感じだけど、目が妙につぶらな瞳で、このギャップがたまらん。

そして、この展示会場がこの作品で終わっていて、「あれ若冲どこいった?」レベルのインパクト大で締めるのがちょっと面白かった。

 

第三展示室では、「若冲の向こうがわ」と題して、ファッションデザイナーの串野真也氏の作品が展示されていた。

若いころから若冲の絵画に魅了されて、鳥などから発送を得た靴シリーズを制作されているそうな。

 

Peacock

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ヒールのところまで凝ったディテール

 

Rooster and Hen with Turnips

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今回の『蕪に双鶏図』をモチーフにした作品だそうだ。

ディズニーの「不思議な国のアリス」に出てきそう。

 

Avian Guardian

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く、靴…?という形だけど、ちゃんと靴なのが面白い(履けるか履けないかは別として)

 

Rosho Hakuo

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インスタレーション的で、一幅の日本画を見てる感じ。

 

Stairway to Heaven A

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これがLady Gagaが履いたという靴と思われる…

履きそうではあるけど、これで歩けるのがすごい。

 

最後にカフェも素敵な感じだった。

パン屋さんで、朝にパンを食べてしまったので今回は利用しなかったけれども、渡月橋まで見えて、最高な眺めだと思われるので、次回行くときにはここでまったりしたい。

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チラシと作品一覧

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