ラファエロ前派の軌跡@三菱一号館美術館
概要
訪問した日:2019/5/19
★★★☆☆
今日のBest:ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ 「≪水辺の柳≫のための習作」
全体的な感想
これまた東京出張のついでに。
実はこの展覧会、何度も行こうとしたのに、何かと邪魔が入ってやっと行けた。
今日も閉館まで1時間弱しかなくて全部観終わるかなと心配だったけれども(実際、最後は駆け足になってしまった)、年間パス持ってるので、また来ればいいやという思いで入った。
ラファエロ前派、昔は結構好きな集団だった。特にミレイの「オフィーリア」や、ロセッティの「受胎告知」とか初めて観た時には衝撃的だった。
でもある時から段々と自分の好みから外れていった。
7年前に兵庫県立美術館でやっていたバーン・ジョーンズ展を観た時には、イラストっぽく見えて何だかな…と思ってしまった。
もちろん、イラストを下に見てるという訳ではないのだけれども、イラストと絵画って結局何が違うんだろうと考えこんでしまったのだ。その答えが明確に出てないのもあって、毎回ラファエロ前派の作品を見ると、同じ疑問がわいてしまう。
例えば、同じギリシャ神話を題材にしてるボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」と、今回目玉のロセッティの「ウェヌス・ヴェルティコルディア」と何が違うのだろうか?好みの問題もあるだりうけれどもボッティチェリの方が誰もが納得する名画の雰囲気を感じるけれども、ロセッティの方は深さをあまり感じられない気がしてしまう…
あとラファエロ前派の“ちょっとな…”というポイントは、あの仲間の仲で不倫があったり(しかも二組も!)と人間関係がドロドロしてるところ。
当時のイギリス人、これでいいのか!?と思ってしまう。
特にミレイ!確かにあなたは1番ってくらいうまいよ!でも、後押ししてくれているラスキンの奥さんを奪うってどうよ!?みたいな。
そこも心安らかに絵を鑑賞できないところでもある。
ちょっとこの展覧会から外れた感想になってしまったけれども、こんなことをぐるぐる考えながら鑑賞した。
因みに、一部、写真を撮っていい部屋があって、主要となる作品もその中に入っていたので、随分太っ腹だなと思った。まぁ海外の美術館など、ほぼ写真OKだけどね…
気になった作品
右側の人たちの中で一番手前人プロポーションが気にはなるけれども、全体的にはターナーっぽくて好き。
風景えお描くというよりも、その風景の色を描くという感じが、さすがとしか言いようがない。
18 ジョン・ラスキン 「モンブランの雪ーサン・ジェルヴェ・レ・バンで」
今回の展覧会で初めて知ったのが、ラスキンも絵を描き、しかもすごく上手いということ。
この絵をはじめとして山のスケッチが結構あるのだが、どれもすごいうまい。
特にこの絵は色が好みだった。青い空をバックに雪山を描いてるのだが、わずかにピンクかかってるところもあって、色も絶妙で素敵だった。
32 ジョン・ラスキン「渦巻レリーフ―ルーアン大聖堂北トランスプトの扉」
こちらもラスキンの画力を感じさせる作品。
でもそれよりも、自分と同じくディテール好きなんでないかと、妙な共感を覚えてしまった。
イタリアに行った時など、建物の構造やディテールに感動してしまい、まるでコレクションのように写真を撮りまくってしまっていたのだが、それと同じ匂いを感じる。ただしこの時代はそんな気軽に写真撮れないので、絵を描くしかないというところに、更なる執着心を感じるが
つつましやかな女性の表情、色調を抑えた中で卓逸した画力を感じる。
個人的に、ミレイが一番絵がうまいと思う。うますぎて面白くない時もあるくらい。
この作品は、女性のやるせなさも出ているような気がして結構好きだった。
正直、ミレイとは逆に、ロセッティは絵がそんなにうまくないと思っている。
でも今回の展覧会では、結構好きな作品がちらほらあって、ちょっと見直した(かなり偉そう)。
この作品もその1つで、彼の短所である(と私が感じている)奥行がないというのが、逆によく効いている気がした。
こちらも同じような調子の絵で結構好み。
思うに、構図が割と好きなのかと。皆、基本的に直立しているのだけれども、腕に動きがあって、画面に流れを作っている気がする。
説明によると、周りの花に関して、ラスキンより雑だと言われ、何回も描き直したそうだ。でもラスキンとの仲が修復されることがなかったらしい…
そうかな…割と丁寧に見えるけどな、と思って凝視してしまった。
それよりも、頭がぺちゃんこ過ぎないか?という方が気になった。おでこが狭すぎるというか。
それなのに顎が張っていて、正直“ウェヌス=ヴィーナス”に見えない…という方が気になった。まぁ、ロセッティと女性の趣味が合わないのは薄々気付いていたけどね。
こちらと「《水辺の柳》のための習作」と、どちらをBestにしようか迷った。
美しさで言ったら水辺~の方が美しいので、そちらにしたけれども、この作品も手の感じなど結構好き。
手の繊細さに比べて、顔つきもさりながら、首や腕の感じがごつくて(腕は服のせいだろうけど)、そのアンバランスさがちょっと惜しい気がした。
今回のBest。
チョークでの描き方が好きだったのと、上でも描いたけれども、ロセッティにしては、女性が美しい気がしたから(多分、彼の感覚では他の作品でも美しい女性なんだろうけど)。
目の色の出し方が非常にきれい。
同じような色調でまとめておいて、眼と唇のみを変えているのが、それらの色を引き立たせているのだと思う。
説明によると、若くして亡くなった娘が、天国で恋人と再会するのを心待ちにしている絵だそうだ。下のキャンバスに描かれているのが、地上の恋人らしい。
地上にいる恋人が、小さな世界に閉じ込められている感じがするのが面白い。
正直、好きな絵といわけではないけれども、額縁を含めた絵の趣向が面白かったので。
あざとさを感じるくらいの可愛さ!後ろに鶴の屏風を置いてあるのが、THE西洋の服・容姿をした親子なのに地面に寝そべっていることに対して、違和感を消しているような気がした(そんな意図はない可能性大だけれども)。
彼の「フレイミング・ジューン」も好きなのだが、それに通じるくらいの、”ちょっと行きすぎじゃないか…”とまで思ってしまう美の追求具合だと思う。
119 エドワード・バーン=ジョーンズ「コフェテュア王と乞食娘」
違うバージョンのものを見たことあったけれども、こちらの方が好きだった。
バーン=ジョーンズにしては色が派手目で、彼にとって挑戦的な色彩だったのではないかな、と思う。完成させていないのが残念だった。
作品リスト