がらくたにっき

美術館・展覧会の鑑賞記録日記

奇想の系譜展@東京都美術館

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 概要

訪問した日:2019/3/17

★★★★☆

今回のBest:浄瑠璃物語絵巻

総評

結構見たいと思っていたものが後期にあったので、色々と都合つけて行ってきた。

と言いつつ、寝坊してしまって着いたのは10時ちょっと前。

上野公園前の長蛇の列を見て「大変だね~」と思っていたけれども、そんなのんきなことを思っている場合ではなかった!

「奇想の系譜展」のチケット売り場も長い列!

前期も大体同じ時間に来たのに、この差!

しかもロッカーがすべて埋まっていて、大きな荷物を持っている身としては、ロッカーの前に陣取って、観終わった人を待つしかなかった…10時だし大丈夫かと心配だったけれども、意外と早くロッカーが空いてホッ。

 

しかし!予想はしていたけれども、中はもっとすごい人!!!

前期で観たものはすっ飛ばして観れたので、そういう意味でも前期来て良かったなとかみしめる。

 

とはいえ、本当に!行って良かったと思った。

特に今回のBestにあげた浄瑠璃物語絵巻は、彩色の鮮やかさ、きらきらした感じなど、画集にはまったく表れていなかったので、本当に実物が見れて良かった~

人混みをかき分けながら観る価値あり。

印象的な作品

前期で観たものははぶくが、やはり若冲の「鶏図押絵貼屏風」と蘆雪の「山姥図」は胸を揺さぶるものがあった。

貼り付けた図は画集からだが、今回は横着して携帯で撮ったので、更に歪んだりしているが、メモレベルの画像ということで。

 

伊藤若冲

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達磨図

これこそ「奇想」にふさわしい作品だと思った。

こんな奇妙で不気味な達磨絵、他で見ない気がする。慧鶴のぎょろっとはしてても愛嬌のある達磨とは違う、異様さがある。

両目が外側向いているのと、毛のつきかたが動物っぽいのが原因だろうけど。

 

曽我蕭白

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群仙図屏風

なかばこれを観に、後期に来たといっても過言ではない。だいたい、本展覧会の目玉っぽくポスターや、図録の表紙に使っているのに、後期にしかないっていけずではないか!?

何はともあれ、舐めるように見たが、見れば見るほど気持ち悪い。

展覧会では左から見ていく順番になるのだが、しょっぱなに異様に体が長い美人風 (決して美人でない)女性、蝦蟇というより水死体(河鍋暁斎展でみたようなやつ)みたいだし、めちゃくちゃきもい泥色の妖怪みたいな奴の耳をかいている美人風女性(これも美人でない)のより目具合も怖い。背景色と同色のような老人二人をやりすごしたら、今度は大勢の気持ち悪い子供。眼が異様に真ん丸で、しかもケバい色使いで益々気持ち悪い。

右隻は気持ち悪さで言えばちょっとマシなのだが、執拗な渦巻きに、執拗な横線が組み合わせっている。よく見れば青い服を着た人の体のしわ(多分筋肉を表現したのだと思われる)、服のしわがありすぎだし、岸の人も左から見た目が奇妙、色がけばけばしいと続き、最後の人が一番まともに見える(どうやら蕭白でないかと言われているらしい)。

とにかく異様、気持ち悪いの一言。

屏風全体でみると、左隻、右隻ともに左から右へ流れるような構図になっていて、構図上は安定しているのだが、中身が破たんしすぎている。

これを祝いの席の為に描いたというのだから、悪趣味の一言に尽きる。

でも奇妙すぎて、じっくり見てしまう、という不思議な絵。

 

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群仙図屏風

こちらのほうが、ずっとまともな(失礼)作品。

これを見ると、蕭白は鼻を描くのが苦手だったのかな、と思う。

まともと言っても、左隻の左側の人の腕の付き方がかなりおかしい。

そして何よりも、鯉がやたらとエッジがきいてるし、鳥も鋼でできているのかと思うくらい堅そう。

右側の人の、子犬のような瞳が、この絵では浮いていて違和感がある。

 

岩佐又兵衛

浄瑠璃物語絵巻 第四巻」

この作品を観るためだけでも後期に来て良かったと思わせられた作品。

細かいもの大好き人間としては、好きが凝縮された作品といっても過言でない。

前期の時には「山中常盤物語絵巻」欲しいとか言ってたけれども、これで全部吹き飛んだ。

公開されていたのは、義経浄瑠璃姫の元へ行くところのシーン。

最初のとっかかりは、義経が邸の中を歩いているだけのシーンなのだが、その邸の様子がなんともまぁ細かいこと!!!

柱や床の木目まできっちり描かれている。

障子の絵が春夏秋冬になっているというのも、細かい演出!

花木が描かれているのだが、邸に生えている松などと混じり合っていて、当時は虚構の花や木と、現実の花や木の調和を楽しんでいたのかな、とも思った。

 

そうして義経浄瑠璃姫と出会い、二人が仲睦まじくなると、周りの風景が簡素化する(それでも細かいが)。

そうすることによって、義経浄瑠璃姫に焦点があたるので、ただ細かくしているではなく、ちゃんと効果を狙っているのが伺えた。

 

冒頭に書いたが、なにせ緻密で、それでいて色も鮮やかで、画集では魅力が100分の1くらいになっている。

この美しい絵巻を手に取って、絵巻を広げていけばいくほど、きらきらとした絵がこぼれてくるのを想像するだけで、「絵巻」という形態もこの作品の重要な要素なのだなと思った。

 

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官女観菊図

よくある墨絵のように、にじみやぼかし

など、ほぼ使われていない作品。

色を塗っていくような感覚で、墨をおいていったのかな、と思わせる。

だからこそ、静謐な雰囲気が出せているのではないか。

 

鈴木其一

 

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朴に尾長鳥図

鈍色にエメラルドグリーンみたいな青緑色を組み合わせると金属っぽい感じがするが、それが葉のつやめきを表現しているように見えた。

この作品の色使いは好きだった。