ル・コルビュジェ展@国立西洋美術館
概要
訪問した日:2019/3/16
★★☆☆☆
総評
基本的には絵画という2Dのものが好きなのだが、ル・コルビュジェの建築は割と好き(と言い切れるほど色んな建築を見てきた訳ではないが…)
ル・コルビュジェの建築物の中で彼の展覧会、というあまりない贅沢さに、興味をそそられた。
大分昔にル・コルビュジェ展に行ったことがあるのだが、その時は、建築中心で模型ばかりで「ふーーーーん」で終わってしまったので、ちょっと心配があったのだが、今回は絵画が中心と聞いて、“じゃあ、行こう!”となった。
絵画の好みとしては、色彩を重視してしまうのだが、ル・コルビュジェ(絵画を描く時はシャルル=エドゥアール・ジャンヌレという本名を使っていたようだが)はさすが建築家だけあって、形が大分重心されている気がした。
色でキャンバスを構成する、というより、形で構成する、というイメージか。
そして調和を第一にしているので、ゴッホのような『ほとばしる感情』とは正反対のところにいる。
絵画から感情的波動を感じないというのか、ものすごいインパクトがあるわけではない。
もう一つ、今更かもしれないが色に関して気付いたのが、キュビズムやピュリズムなど、黒や灰色を多用しているが(それがあまり好きでない要素の1つでもある)、それは工業が非常に発達した時代背景において、機械のイメージが“先進的”“かっこいい”等と非常に良いものだったので、その色が多用されているのではないか、ということ。
会場入り口あたりにピュリズムについての説明の映像があるのだが、それが非常にわかりやすかった。
黄金比を厳密に守ったことや、キュビズムとの違い(キュビズムは多角的視点に対して、ピュリズムは真上と真横という2つの視点のみ)、ピュリズムが重なりに傾倒していくことなどが、映像を使って説明しているのが分かりやすかった。
印象的だった作品
シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジェ) 「暖炉」
ル・コルビュジェの初めての絵画とのこと。
暖炉の上の部分をクローズアップした作品でタイトルがないと暖炉と気付かない。
視点が面白いなと思った。
シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジェ) 「開いた本、パイプ、グラス、マッチ箱のある静物」
デッサンの技術で見てしまうと全然なってないが、シンプルに“かっこいいな”と思わせる作品。
物の配置もかっこよければ、画面上部だけ赤色というのもかっこいい。
シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジェ) 「白い碗」
よく見たら碗が台から落ちそうで不安定なのだが、不安定感を感じさせない、むしろ絶対的な安定感のある作品。
計算されつくされている感がすごい。
それでいて、線が定規でひかれたような線ではないので、どこかしら温かさもある。
ル・コルビュジェ展に来ておきながら、本日のBestに選んでしまったが…
キュビズム時代のピカソって、正直、良さが分からないのだが、これは“うわっ!好き!”となった。
「静物」というタイトルでいながら、何が描かれているのか分からないけれども、色と形の構成が絶妙。
特に、黄金比とか様式にのっとった美を追求しているピュリズムの中にあると、考え抜かれてはいるだろうけれども、心が美しいと思う色の構成・形の構成になっている気がした。
キャンバス地が割と荒いものを使っているので、テクスチャを感じるのも良い効果を生んでいると思う。
シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(ル・コルビュジェ) 「多数のオブジェのある静物」
今回の目玉作品(たぶん)。
この頃になると、重なりを透明化して表現するようになる。
そのため、こんなにたくさんになると、物の判別が分からなくなり、抽象画のようになる。
でも実際にある形を使っているので、抽象画と具象画の交じり合った感じでなんともいえない表現になっている。
色も結構好きだった。
アメデ・オザンファン 「真珠母No.2」
単純に色が好き。
最後に
デッサンなどを見ると、対象をじっくり見て似せる、というよりも、対象の中の美、どういう形だから美しいと思うのか、といったのを探そうとしている感じがして興味深かった。
また、国立西洋美術館は常設展示も見応えあるので、チケットがお得な気分になる。
林忠正展もやっていて、そちらは明治時代にフランスで日本美術を広めた功績が見れて興味深かった。