クリムト展 ウィーンと日本1900@東京都美術館
概要
訪問した日:2019/07/04
★★★☆☆
今日のBest:グスタフ・クリムト「女ともだいI(姉妹たち)」
全体的な感想
Facebook友達がこぞってクリムト展に行っていたので、ミーハー心もあいまって東京出張時に午前休取って行ってきた。
9:30開館なので、10分くらい前に行ってみたらこの行列!木曜日の朝なのに!
並んでいる間にネットでチケットを買いましたとも。
今週の週末は特にすごいんだろうな…
内容としては…
「じゃあ何で行ったんだ!?」と言われそうだけれども、そんなにクリムトは好きではないので、まぁそんなものか(えらそう)という感じ。
やはりクリムトくらい大物になると、写真やスケッチが多くて、実際の作品は少なめなのかな。とはいえ、大物作品もすごい来ていたので展覧会としては充実度が高かったと思う。
クリムトはあんまり…と言いつつも、肌の色は好きなので、やはり本物を見るのは非常に勉強になった。
印象的だった作品
めちゃくちゃ可愛い!!!
髪の毛の質感がすごく出ているので、髪をなでたくなってしまう。でも少しだけ見える表情で、割と大人びた雰囲気の少女っぽくて、なでるのに躊躇してしまうような。
そういった雰囲気が出ているのが本当にすごいな、と思った。
頭部だけしっかり描いて、あとは色調を抑え、筆致も粗いのも、大人っぽいけれども柔らかい幼さが残っている感じを出している気がした。
10 グスタフ・クリムト「レース襟をつけた少女の肖像」
11 フランツ・マッチュ「レース襟をつけた少女の肖像」
同じ題材、同じモデル、同じポーズ、ということから、学校の課題で描かれたような作品。
正直なところ、マッチュの方が軍配が上がっている気がした。
少女の顔の角度、構図でこんなにも変わるんだな、と分かる作品だった。
17 ハンス・マカルト「ヘルメスヴィラの皇后エリーザベトの寝室装飾のためのデザイン(中央のエ:『夏の夜の夢』)
当時、一世を風靡していたマカルト。
デザイン画とあるが、1つの立派な絵画になっているのがすごい。
29 フランツ・マッチュ「女神(ミューズ)とチェスをするレオナルド・ダ・ヴィンチ」
正直なところ、女神はそこまで美人ではなかったものの、クラシカルな画風の女神とレオナルド・ダ・ヴィンチの後ろが平面的なデザイン(アールヌーヴォー的な)というのが、面白い組み合わせだと思った。
32 グスタフ・クリムト「紫色のスカーフの婦人」
写真を模写した絵とのこと。
絵自体は正方形だけれどもキャンバスは長方形。余白となる下部が金色一色で、なんだか面白い構図
48 第6回ウィーン分離派展ポスター(菊川英山《鷹匠図》に基づくモティーフ)
浮世絵をあしらったポスター。
紙自体も細長いし、そこに配置されている浮世絵も、多分、原画よりも細長くトリミングしている気がする。
それだけ、日本の絵画の細長さが印象的だったんだろうな、と思った
本日のBEST。
黒で占められている中、ポイントで多色を配置。
浮世絵など日本美術の影響でこの構図なのだろうが、おしゃれ感がある気がする(浮世絵がおしゃれでない、という訳ではなく)。日本美術をそのまま写すんではなくて、消化されている感じ。
55 グスタフ・クリムト「17歳のエミーリエ・フレーゲの肖像」
これと49とで本日のBEST、迷った。
ラファエロ前派の展覧会から、パステルっていいなと再認識。前回のロセッティとはまた違った雰囲気のパステルだけれども、それだけにパステルの色んな表現方法が分かった。
その人物の顔つきはきつめではあるのだけれども、パステルのおかげでふわっと柔らかさが出ている。かといって、よくパステルであるぼやぼや感もなく(実際、ぱっと見はパステルと分からなかった)、わりとぱりっと描きこんでる。
それでいて油絵にない柔らかさが出ているのは、パステルの力なのかな…
赤ちゃんが布の山に鎮座しているようで斬新。
こちらも浮世絵の影響らしくて、花魁の大ぶりな着物からインスピレーションを受けたらしい。そういわれると分からんでもないけど、知らずに見ると、赤ちゃんが鎮座して見下ろしてるみたいで面白い。
本展覧会のポスターにもなっている目玉作品。
右目と左目が対称となっていなくて、若干大きさが違うのが、色気を出させているのだと思った。
あと、他の作品でも思ったけれども、クリムトって割と歯をきっちり描くのね。
84 グスタフ・クリムト「鬼火」
キャンバス自体にテクスチャがあるようで、変わった質感を出している。
展示の仕方のせいなのか、光が反射しすぎてよく見えなかったのが残念。
雨上がりのふわっとした雰囲気がよく出ている。
以前、他の風景画を見た時にも思ったが、クリムトの風景画は結構好き。
クリムトの風景が好きと書いた直後だが、これを見た時、「うわっ!クリムト、病んでる!?」と思ってしまった。草間弥生っぽいというか。
そしたら解説に、”ゴッホの技法から学んだ”といったことが書かれていて妙に納得。
クリムトの描く肌の色が結構好きなのだが、こちらもとても勉強になった。
顔の中の影って茶色とか暗い色にしがちなのが、この絵では緑色、しかも結構明るいエメラルドっぽい色にしている。同じ色が服に何度も出てくるので、破綻していないし、不自然な顔色にもなっていない。
オイゲニアさんが、派手な服を着させられて、ちょっと戸惑ったような、恥ずかしがっているような、居心地悪そうな顔をしているのも乙。
あまり表情は好きじゃないけれども、白と黒の分割具合といい、構図といい、ファッション雑誌にありそうで面白い。
色んな画家の習作って結構好きで、習作の中にその人たちの描き方が見えてくるのが面白い。
この作品も習作らしく、きっちり描きこんでいないが、服のひだ、顔が描きこまれていて、そこがクリムトの関心どころなのかな、と見えてくる。
ぼやっとしていても作品になっていて、やっぱうまいんだなと感心してしまう(何様)。
こちらも目玉作品。
とはいえ、そこまで好きじゃない…老婆が嘆いているのが、『失礼な!』という気持ちになってしまうので。幼子はとても可愛いけど。
”家族”というタイトルを聞いて、あたたかな雰囲気を想像していたら、なんともかけ離れた作品。
死んでしまっているのか、ただ眠っているのか分からないけれども、いずれにしても悲壮感が漂っている。
これが展覧会の〆の作品というのが、なんとも…
最後に特筆すべき点としては、「ベートーヴェン・フリーズ」の原寸大複製があったこと。その一角で第九が流れていたのはいい演出だと思ったけれども、なんでわざわざ複製?と思ってしまった。