フィリップス・コレクション展@三菱一号館美術館
概要
訪問した日:2018/12/21 2019/1/17
★★★★★
今回のBest:ピエール・ボナール 「棕櫚の木」
総評
年間パスを買ったのもあって、2回見に行った展覧会。
それくらい良かった!
画家単体の展覧会よりも、色々な絵が観れるという楽しみと、
コレクションした人の嗜好が見れるという面白さが相まって
コレクション展はなかなか面白いかも、と再認識した。
特に、去年、ボナール展を観に行ったのだが、
その時よりもはるかにボナールの作品が光っていたのは、
ボナール単体だと何となくぼんやりしてしまうところが、
他の作品と一緒に飾られると、彼の作品の良いところが引き立つからのような気がする。
大満足の展覧会だったけれども、1点だけ難点を言うと
作品リストの番号と、展示の順番が大きく異なること。
観るだけだったらいいけれども、後から反芻したりするのに
観た順番があまりに作品リストと違うと混乱してしまう気がする。
誰かから指摘があったからなのか、2回目に行った時には
各絵画のプレートのところに、作品リストの番号があった。
(1回目にはなかった気がする)
作品リストと覚書
ということで、以下、展示順の作品リストと自分の覚書;
(順番は 展示順、タイトル後の()内の数字は作品リストの番号)
1. クロード・モネ 「ヴェトゥイユへの道」(16)
ピンクと水色が美しい。
よく見ると、水色はそこまで鮮やかなものではないのだが、全体的に見ると水色がきれいに見える不思議。
2.ウジェーヌ・ドラクロワ 「パガニーニ」(4)
即興で描いたというが、その割には手が短すぎないか?と思ってしまった。
バイオリンがめちゃくちゃ小さい。パガニーニの悪魔的演奏の印象なのか?
3.オノレ・ドーミエ 「三人の法律家」(12)
挿絵画みたいな絵。法律家の連帯感の強さと、暗闇にいる貧しい人達を気に留めない尊大さを表現しているとのこと。
でも、正直、絵からは、微笑ましいおじさま達のじゃれ合いにしか見えなかった。
4.ギュスターヴ・クールベ 「地中海」(10)
クールベっていいの!?と思ってしまうくらいしょーーーもない作品。
こんなに曇っているのに、水平線がくっきりしすぎじゃないか?
見たものしか描かないという割に、本当に!?と思ってしまう。
5アルフレッド・シスレー「ルーヴシエンヌの雪」(15)
雪のけぶっている感じがよく出ている。
よく見るとかすれた筆致で、乱雑に白い線を描いているのだが(特にフェンスのようなベタ塗部分)、それがけぶっている感じを出している。
6.ジャン・シメオン・シャルダン 「プラムを盛った鉢と桃、水差し」(1)
シャルダンらしい作品。
水差しが中華風陶磁器というのが、あまりに西洋風絵画にアクセントをつけている気がする。
布が背景なのか、こげ茶の線が入っているのが、ただののっぺりした平たんな空間にはなっていない。
7.オノレ・ドーミエ 「蜂起」(11)
大きな作品。それでいて、線画っぽくて、表情などからイラストっぽい感じがする。
だからか、迫力と共に、何か訴えるものがある。
8.ピエール・ボナール 「犬を抱く女」(36)
素敵!
女の顔、犬の頭、手前のボトルが背景の線(ドア枠?)上にあって、安定感がある。
女が来ている服は鮮やかな赤。女の顔は影かかっていているのだが、不思議な色合いで、いかにもボナールな色。
犬は言われないと分からないくらいただの茶色い塊だけれども、それが調和が取れている感じがする。
9.ベルト・モリゾ 「二人の少女」(27)
10.アリスティード・マイヨール 「女の頭部」(28)
11.オノレ・ドーミエ 「力持ち」(13)
小さい絵。「蜂起」と向い合せに飾られている。
蜂起とは対照的に、線はない。手の動きが蜂起と同じく印象的。
クールベって何がいいの!?第二弾。
素人でちょっとうまい人が描いた絵といっても不思議でない感じ。
13.ジョン・コンスタンブル 「スタウア河畔にて」(14)
コンスタブルって名前はよく聞くけれども、風景画にあまり興味がないのもあって
他の作品の記憶がないのだが、この作品は不思議な魅力があった。
木が生い茂った風景画に白い絵の具をナイフで刻むようにのせている。
右側の雲もところどころに同じく白い絵の具がナイフでのせられている。
この白いのが雨なのか、よく分からない。
解説には光のきらめきのようなことが書かれていたけれども、驟雨という感じがする。
雲の白さは、雲が光で白く光っている感じがするが。
14.ポール・セザンヌ 「自画像」(23)
すべてが溶けているかのような感じだけれども、その溶け具合が、今回のように照明が暗く、高いところにあると、不思議と調整が取れているように見える。
15.エドゥアール・ヴュイヤール 「新聞」(26)
新聞を読んでいる人が横長のキャンバスに描かれている。
あまり印象的な絵ではないが、なぜかテーブルクロスの一部だけが、やけに鮮やかな赤で、めちゃくちゃ目立っていたのが気になった。
16.エドゥアール・マネ 「スペイン舞踊」(6)
横長のキャンバスに、人が横並びにポツポツといる。なんだか奇妙な絵。
舞踊というほど動きを感じられないのは、この配置のせいか?
17.ジャック・ヴィヨン 「機械工場」(49)
素敵!遠景の色がなんとも言えない美しさ。
19.アンリ・ルソー 「ノートル・ダム」(34)
ルソーを見ると無条件にほっこりしてしまう。
影がないせいか、男の存在感が謎なのもいい。
20ピエール・ボナール 「棕櫚の木」(39)
今回のベスト。多分、今まで観たボナールの中でも1位2位を争うくらい好きだった。
毎度思うが、近くにある木の緑は、嘘っぽいビリジアンなのだが、遠景は本当に素敵。
更に、棕櫚の葉っぱが金銀に煌めいている感じが素晴らしく、夢のような雰囲気を出している。
21.パウル・クレー 「養樹園」(59)
パステルのような色合いの下地に、刻み込むように線描。
シンプルに可愛い。
22.ピエール・ボナール 「開かれた窓」(37)
適当に描かれた黒猫が可愛い。
壁紙が朱色と水色っぽい、自分では考えつかない組み合わせなのだが、妙な調和。
そして空の色がきれい。
23.フィンセント・ファン・ゴッホ 「アルルの公園の入り口」(18)
いかにもゴッホな絵。つまり好きでない。
24.ジョルジュ・ブラック 「ブドウとクラリネットのある静物」(45)
25.ジョルジュ・ブラック 「レモンとナプキン」(44)
いつもはこの手の作品、あまり興味がないのだが、すごく洒落ていて素敵だった。
pale colourのレモンが、同じ色調なのに、置かれているところ(背景色)によってくっきりしたり、溶け込んだりしていて、その調和が計算されつくされている感じ。
26.ジョルジュ・ブラック 「円いテーブル」(46)
27.パブロ・ピカソ 「道化師」(33)
28.パブロ・ピカソ 「闘牛」(62)
29.フランシスコ・デ・ゴヤ 「聖ペトロの悔恨」(2)
丸い顔に丸い鼻、丸い頬のせいか、聖人にまったく見えない、ただのおじさん。
いいのか?と心配になるくらい、ただのおっさん。
30.ポール・セザンヌ 「ザクロと洋梨のあるショウガ壺」(25)
敷かれている布の青色が非常にきれいな色で(上の画像よりも澄んだ色をしている)、いいアクセントになっている。
31.ポール・セザンヌ 「ベルヴュの野」(21)
30の絵と異なり、いつものセザンヌより彩度の低い絵。
もう少し高い方が好きかも。
32.ジョルジュ・スーラ 「石割り人夫」(19)
とても小さい作品。点描画でない彼の作品を初めて観たかも。
33.ロジェ・ド・ラ・フレネ 「エンブレム(地球全図)」(48)
ブラックに比べて妙に絵の浅さを感じてしまう作品。
構図やデフォルメの仕方が安易すぎるというか、水色が安っぽく感じるというか。
34.アンリ・マティス 「サン=ミシェル河岸のアトリエ」(41)
あまり好きでなかった。横たわる裸体があまりに太い黒線で描かれているのが野暮ったく感じてしまった。
マティスはもう少し鮮やかな色の作品の方が好き。
35.カミーユ・コロー 「ローマのファルネーゼ庭園からの眺め」(7)
あまりにうますぎて、逆に何も感じなかった。
36.オスカー・ココシュカ 「ロッテ・フランツォスの肖像」(51)
初めて知った画家。素敵だった。
憂いを帯びた表情が良い。
薄めた絵具で描いたような肌と、体の輪郭に沿った緑色などが良い。
37.エドガー・ドガ 「稽古する踊り子」(29)
色の塗り方、形の作り方などすごく好き。
ただ背景となっているオレンジ色があまりにどぎつすぎて、色は好みでなかった。
38.シャイム・スーティン 「嵐の後の下校」(58)
39.オスカー・ココシュカ 「クールマイヨールとダン・デュ・ジェアン」(55)
風景画。こちらはあまり惹かれなかった。
40.ラウル・デュフィ 「画家のアトリエ」(40)
ほぼ原色の平塗と線で構成されているような絵で、モダンなしゃれた感じ。
ちょっとマティスっぽいけれども、デザインっぽさが強めで、とりあえずしゃれてる。
と思ったら、装飾家でもあるらしい。納得。
41.ウジェーヌ・ドラクロワ 「海からあがる馬」
ドラクロワらしい、丸まるとした馬が数頭描かれた、割と小さめの作品。
42.ワシリー・カンディンスキー 「連続」(60)
単純に可愛くておしゃれな感じで好き。音楽性を感じる。
43.ワシリー・カンディンスキー 「秋II」(50)
44.二コラ・ド・スタール 「ソー公園」(71)
45.ヘンリー・ムーア 「ファミリー・グループ」(66)
THEヘンリー・ムーアな彫刻
46.フィンセント・ファン・ゴッホ 「道路工夫」(20)
47.ドミニク・アングル 「水浴の女(小)」(3)
同じような作品で、もっと大きいサイズのを見たことがあるせいか、小さいと玩具のように感じてしまった。
48.アメデオ・モディリアーニ 「エレナ・パヴォロスキー」(43)
かっこよくて、パリの洗練された女性という感じが出ていて素敵。
肌の色の出し方も素敵だった。
鼻は線描なのだが、肌の色ににじませていて、それが影のようになっていた。
49.ジョルジュ・ブラック 「フィロデンドロン」(74)
50.パウル・クレー 「画帖」(61)
大きなキャンバスに力強く、ところどころ盛り上がった黒い線で描かれてるので、ものすごい迫力。見ごたえある。
53.ジョルジュ・ブラック 「ウォッシュスタンド」(47)
54.ポール・ゴーガン 「ハム」(22)
なんでハム?と突っ込みたくなる題材だが、有無を言わせない感じがする、妙に説得力のある作品。
55.シャイム・スーティン 「雉」(56)
狩猟で狩ってきたと思しき雉が、流れるような線で描かれている。
といっても線描というわけではなく、同一方向の線で面を構築させている感じで、雉の印象をよくとらえていると思った。
鮮やかな赤も良いアクセント。
56.アドルフ・モンティセリ 「花束」(24)
一瞬、素敵かも、と思わせるが、よく見ると割と平凡な作品。
57.ジョルジョ・モランディ 「静物」(70)
お約束な感じの作品だけれども、瞑想するような、すごく静かな作品で好き。
58.モーリス・ユトリロ 「テルトル広場」(35)
59.ジョルジュ・ブラック 「驟雨」(73)
目線がまっすくなところ、水色の空が広がっているなか、画面右にちょいちょいと雨が線で描かれている。
驟雨とはいえ、宙に浮いた感じに雨が描かれていて、なんだか記号みたい。
60.二コラ・ド・スタール 「北」(68)
61.ベン・ニコルソン 「静物」(67)
62.ハインリヒ・カンペンドンク 「村の大通り」(54)
北欧とかロシアの絵本みたいな作品。
突然メルヘンが来た感じだった。
63.フランツ・マルク 「森の中の鹿 I」(53)
64.ワシリー・カンディンスキー 「白い縁のある絵のための下絵 I」(52)
65.オーギュスト・ロダン 「姉と弟」(65)
年の差のある姉弟の彫刻。姉と弟というより、母と子かと思うくらい、姉が慈愛に満ちてる。
66.クロード・モネ 「ヴァル=サン=二コラ、ディエップ近傍(朝)」(17)
67.カミーユ・コロー 「ジェンツァーノの眺め」(8)
68.ジョルジュ・ブラック 「鳥」(75)
69.アルベルト・ジャコメッティ 「モニュメンタルな頭部」(72)
70.パブロ・ピカソ 「女の頭部」(69)
民族の仮面みたいな彫刻
71.パブロ・ピカソ 「横たわる人」(63)
けばけばしい色調であまり好みでない。
72,パブロ・ピカソ 「緑の帽子をかぶった女」(65)
逆に色調が抑えられつつ、アクセント的に帽子と服が割ときれいな色。
だからと言って好きかと言われると、そうでもない。
74.エドガー・ドガ 「リハーサル室での踊りの稽古」(32)
色調の抑えられた、横長の作品。
下に降りていく階段など、部屋の様子も丁寧に描かれているので、本当に稽古風景を切り取った感じで好き。
75.オーギュスト・ロダン 「身体をねじって跪く裸婦」(31)
堪能したというのと、初めてのブログで熱が入って長々と書いてしまった。
最後に作品リストも貼り付けておく。